2024年 12月

Trilogy
L I N E
~愛と葬式、そして、環太平洋~(仮)

 

 

 

 

 

作・川島大河

登場人物

    第1幕

サトシ 

ミオ(声)

     ビジネスマン
     女子高生

     若い女性
     若い男性

     グループ男性1
     グループ男性2
     グループ男性3
     モデル風女性

     清楚なお姉さん1
     清楚なお姉さん2

    第2幕
   
  カオル

     ユイ

     シホ

     アキ

     サトウ

     サトシ
   第3幕

     カオル

     サトシ 

   第4幕
     
     カオル 
     
サトシ

タエ

     コウタ

   第5幕

     タイジ

     アヤ

     シマダ 

     ジェイ

   第6幕

     サトシ

     タイジ

     カオル
客席が明るいうちから、微かに繁華街の雑踏音が流れている。クラクション、信
号機の誘導音、呼び込みの掛け声、携帯電話の電子音などが渾然一体となって、観客の聴覚を刺激する。

○第1幕
ハチ公前のような繁華街の待ち合わせスポットで、サトシがスマホを片手に会話をしている光景が見えてくる。もう一方の手には、長ねぎなど食材らしきものが入ったスーパーのビニール袋を持っている。
後方には、誰かを待ちわびる若い女性、ビジネスマンが、スマホを手に取り操作をしながら暇つぶしをしている風である。

サトシ んっ、どうした? 連絡こないから、心配になってさあ。…あっ、まだ、仕事中なんだ、ゴメンゴメン、悪い、悪か
    った。    
    …
サトシ よかった。でも、どうしようか…。終わりそう?
    …
サトシ いや、俺は大丈夫だよ、どっかで暇つぶしてるからさぁ。コウタにも言っとくから、心配しないで。
    …
サトシ いや、悪くないよ。ミオには、ちゃんと頑張って欲しいしさぁ。バックアップしたいしさぁ。あぁ、何か、具体的な
    ことで、後押しは出来ないかもしれないけど、待つことぐらい、そんなことで良ければ、俺、全然…。
    …
サトシ あっ、分かった、じゃ、落ち着いたら連絡してね。…、はい、はいはい、じゃあね。
    
電話を切る、サトシ。

サトシ (独り言)マジかよ…。
    
ビニール袋を地面に下し、しばし、呆然。すると、どこかに、電話を掛け始める。

サトシ あっ、俺。今、大丈夫? うん。…、悪い、ちょっと遅れるかもしれない、というか、もしかしたら、今日、行けな 
    い可能性もある。いや、俺は大丈夫なのよ、でも、ミオがさぁ…。
    …
サトシ 独立してフリーになったばっかりじゃん。やっぱ、来る仕事はどんどん受けたいみたいだし。…本当は今日だって、
    空けといてくれたんだけど、急にさぁ…。
    …
サトシ 撮影って、どうしても、のびちゃったりするんだよね。特に、ヘアメイクなんかだとさぁ、ねえ、自分の都合を優先
    すること、できないじゃん、やっぱりさぁ…。カメラマンのアシスタントだって似たようなものでさぁ、俺だって辛
    いことがあったりするわけよ。だから、その辺の状況が、分からないわけじゃなくて…。
    …
サトシ んっ? 食材は、もう、買ってあるよ。ミオが豆乳キムチ鍋作るって、張り切ってたから、レシピ、メールしてもら
    って…。でさぁ、ちょっと、昨日の夜、想像してみたんだけど、豆乳って白じゃん。キムチって赤じゃん。それを合
    わせると、もしかしたら、ピンクになるのかなぁって…。なっ、理論的にはそうなるはずだよな、何が理論的なのか
    は分からないけど。
    …
サトシ …まあ、作れないことないよ、というか作れると思うよ、カオルさんの仕事、見て育ってきてるわけだからさぁ。で
    も、ミオ、お前んち知らないし、俺、先行って、作ってるわけにいかないじゃん、本人がやる気マンマンなんだか
    ら。…住所メールして、一人で来いだなんて、言えないよ。それゃ、ひどいだろ、人として…。

    どうやら、キャッチが入ったようだ。

サトシ 悪い、ミオから、キャッチ。掛け直すわ。

    スマホの通話ボタンを切り替える。

サトシ (いかにも優しそうな声音で)はいー、どうもー。お疲れ様でーす。…大丈夫? ああ、大丈夫だから掛けてきてくれ
    たんだよね、ハハハ。
    …
サトシ …、それって、バラエティとかに良く出てる巨乳のコ? 
    …
サトシ いやいや、そうじゃなくてさぁ、最近良く見かけるから、当然知ってるわけでしょ…。まだ、来てないの? そろそ
    ろ来る感じ?
    …
サトシ じゃあ、早くて、2、3時間は掛かりそうだね。
    …
サトシ まあ、でも、まだ、夕飯の頃合まで時間はあるし。あっ、そうそう、レシピ通り、材料は用意してあるからさぁ。
    …
サトシ いいよ、いいよ、待ってるよ、コウタにも、今、そう言ってたとこで、丁度、ミオからキャッチが入ったんだよね。
    …
サトシ …悪くないよ。いいんだよ、コウタのことは。俺は、ミオと話したいんだから。…えっ、この間のことは、もう、い
    いよ。仕事だからしょうがないさ。
    …
サトシ いつもいつもじゃないよ。別に、問題ないよ。俺、何も気にしてないし。頑張ってるミオのことも…、その何だ…、
    んー、大切にしていきたいって思ってるし…。
    …
サトシ えっ、何で、俺が、ミオを怒らなきゃならないわけ、怒ってもいないのに。
 
    若い男の3人組が、楽しそうに、この待ち合わせ場所に下手より現れる。
 

    サトシ、不快な目つきで男たちを見やる。

サトシ 優しく見守ってちゃ、ダメなの? ミオだって、俺の仕事が不規則なことも理解してくれてるじゃん。お互いさまだ
    って。
    …
サトシ えっ、何で、今、その話になるわけ!? もう、終わったことでしょ…。俺が誤解させるようなことをしてしまった
    のがいけなかったんだよ、あのことは…。
    …
サトシ だから、謝ったはずでしょ、そのことは。それから、もう二度と彼女とは会っていないし、連絡もとっていない。
    …
サトシ 言葉上で、彼女って言うでしょ? ねっ、言わない? 
    …
サトシ 何で、そこで、ミオが浮気をしたらとか、そういう仮定の話になるわけ? 浮気をしたら俺が怒るのかとか、何で、
    想像の出来事を、今、語り合わなきゃならないわけ?
    …
サトシ …はい、はい、浮気をしたら怒ると思いますよ、きっと。ミオが、俺の時に怒ったようにね。
    …
サトシ 違うでしょ。それは言葉のあやでしょ。浮気じゃないの、飲みに行っただけ、それも一度っきり。それは、浮気とは
    言わないんです。…そういうミオこそ、何かやましいこととかあるんじゃないですか!
    …
サトシ うわぁー、ゴメンゴメンゴメンゴメンゴメン! 嘘、嘘、全部、嘘。俺、今、言ったこと、全部嘘だからね。…ん
    ー、誤解をしてもらうと困るなぁ。ああ言えば、こう言う的な、言葉のキャッチボールみたいなものだと解釈してい
    ただきたいなぁ…。
    …
サトシ …何もいうことはございません。大変申し訳ございません。もう、二度と、そのようなことは口に致しません。今、
    この場で、土下座をさせていただきたいと思います。

    と言うが、別に土下座をする風でもない。
    さっき来た、待ち人男3人組の元に、モデルの様な美女が上手より到着し、3人と合流し下手側に去っていく。
    サトシ、えっ、どんな関係?という目つきで、4人を眺めつつ…。

サトシ 待ってるからさぁ。…なぁ、頼むよ、ミオ…。

    と、どうやら通話が切れた様子。

サトシ もしもし、もしもし! どういうことなんだー! ちくしょう!

    サトシ、急いで電話を架け直す。
    相手が電話に出たようだ。

サトシ (一気呵成に)もしもし、(猫なで声で)ごめんなさーい。思ってもいないことを、言ってしまいました、俺。ホン
    ト、悪かった。二度とこんなことしませんから。どうか赦してください。お願いです!
    …
サトシ はっ? 誰だお前? えっ、あれ…、あっ、間違いです。失礼しました。

    サトシ、電話を切る。どうやら間違い電話を架けてしまった様だ。再び、電話を架け直す、サトシ。

サトシ …もしもーし。…、あれ、何で? 何でですかねぇ? いや、…何でかなーと思ったから、何でですかねぇ、とお聞
    きしたまでで…。
    …
サトシ あっ、いやいや、架け間違っただけじゃないですか。はーい、では切りますよ。…ええっ、何? 訴える? 間違い
    電話架けられて裁判するバカがどこにいるんだよ! 俺はなあ、今、物凄く機嫌が悪いんだよ。これ以上俺を怒らせ
    ると…。えっ? 気持ち悪い? お前には関係ないだろ、おれが猫なで声で謝ろうが、どうしようが…。こっちこ
    そ、個人情報保護法を振りかざしてなあ、んー…、訴えてやるからなぁ!
    
電話を切る、サトシ。 と、今度は、サトシの電話に着信が入る。

サトシ しつこいぞ! 一体、何様なんだよ。出るとこ出てやるぞ、てめえ!
    …
     
サトシ、足元から、崩れ落ちる。

サトシ (哀愁の雄叫び)ミオー、ミオー、ミオー。…何だか分からないけど、俺、混乱しているみたいなんだ。…きっと、今
    日はそういう日なんだよ、物事が全て上手くいかない日。そういう日って、たまにあるだろ、なぁ?
ミオ(声)…しばらく、会うの、やめない?

    ミオの声だけが響き渡る。
    茫然自失のサトシ。
    人待ちをしていた女性の元には、下手より男性が現れ、下手に立ち去っていく。
    苛立ちを募らせる、サトシ。

サトシ (冷静を装い)えっ、んっ? なになに? んー、ちょっと、言ってることが分からないんだけど。…あれ、それとも
    俺の聞き間違い? もしかしたら空耳かなぁ? (空笑い)ハハハ。いやいやいや…。
    …
サトシ 何でだよ。何でラインしなきゃならないんだよ。今、こうして、お話をしているのだからね、会話をしましょうよ。
    急にメールとか、可笑しいでしょ。まあ、電話じゃ何だから、いずれにしてもさ、仕事終わったら、会いましょう
    よ、ね? そうだ、それがいい。そうしましょう。豆乳キムチ鍋をつつきながら、とことん語り明かそうよ。
    …
サトシ そんな、急に、明日の朝早いからとか言われても…。だって、そもそも、今日、鍋大会の日だったでしょ。そうでし
    ょ?
    …
サトシ …うざくないでしょ。約束してたことを、確認しただけでしょ?
    …
サトシ …うるさくないでしょ。ただ、ミオと会えるのを楽しみにしてただけでしょ?
    …
サトシ …ああ言えば、こう言うじゃないでしょ。ちゃんと話をしたいだけなんだからさぁ、俺は。
    …
サトシ ちょっと、待って。待ってくれよ。こんなの可笑しいよ。だって、変だよ、これから、豆乳キムチ鍋、作るじゃなか
    ったのかよ。だって、だって、だってさ、好きなんだからさぁ、俺、ミオのこと…。

電話はどうやら切れてしまったようだ。
人待ちをしていたビジネスマンの元には、セーラー服を着た女子高生が客席通路より登場し、近寄っていく。スマホを見せ合いながら、どうやら連絡を取り合っていた相手であることを確認している様だ。そして2人は、客席通路に消えていく。
と、ラインの着信音が鳴り響く。
サトシ、スマホを一所懸命、操作している。
舞台上の背景には、ラインのスタンプが入れ替わり立ち替わり投影され、2人がキャラで会話をしているプロセスが見受けられる。
※あるいは、操作する姿だけを見せる。

※画像、要検討。
    
真剣なのやら、ふざけているのやら。もう、ミオからのスタンプは届かない。
  
サトシ やだよー! やだよやだよやだよ。もう、つながらないのかよー!

しょげ返る、サトシ。
打ちひしがれた、サトシの前を、清楚で可愛い女性2人組が、下手から現れ、上手に抜けて行く。
サトシ、フッと目を上げ、こんな状況なのではあるが、女性の後姿を目で追ってしまう。
スコンと、明かりが落ちる。
音楽が、ガン、と流れ始める。

○第2幕
音楽をかき消すかのように、暗闇の中で、電話の音が鳴り響き出す。
電話を出たらしき気配がして、ヒソヒソと話し声が聞こえてくる。
ゆっくりと明るくなっていく。
上手側の手前で、カオルが受話器を手に話している姿が見えてくる。
話し終え、ゆっくりと受話器を置く、カオル。
センターには、大きなテーブルと数脚の椅子が置かれている。
ちょっと、ぼうっとしている様子のカオル。
ユイがその場に下手より現れる。

ユイ  カオル先生、お料理、運んじゃっていいですか?
カオル (我に返り)ああ、大丈夫、お願い。

    ユイ、下手に引っ込む。
    すると、大きなメインディッシュの皿を持ったサトウが下手より現れ、テーブルの上に皿を置く。
    その後、アキとシホも、料理が載った別の皿を持って下手より現れる。
    ※料理は実際にあっても、架空であっても、どちらでも構わない。
    そして、ユイが、取り皿と箸を持って、再度、下手より入ってくる。

シホ  カオル先生、今日も綺麗で美味しそうな出来上がりですね。
ユイ  ローストビーフって、難しそうに見えるじゃないですか。でも、こんなに簡単に出来るクイック料理だってことが分
    かって良かったです。いざっていう時に、主婦の味方になってくれそうです。
サトウ 俺は男の料理だって感じがして…。彼女に食べさせてやりたいですね。
アキ  彼女、いないみたいですけどね。
サトウ いつかは、という願望ですよ。いいじゃないですか(笑)。
カオル まあまあ、では頂きましょうか。
全員  いただきます!

と、アキが。

アキ  先生。撮ってていいですか。フェイスブックにアップしたいんで…。
カオル どうぞ。
    
テーブルの上の料理を撮るアキ。写真を撮り終え…。

アキ  (皆に)すいませんでした。
     
    アキは、スマホを操作しており、どうやら、即、フェイスブックに画像をアップしているようだ。
    カオルが大きなお皿に載ったローストビーフを切り分けていく。

サトウ あっ、俺、手伝いますよ。
カオル サトウクン、有難う。でも大丈夫よ。

    そのほかの料理は、パプリカと野菜のマリネ、イワシのエスカベッシュ、ミネストローネなどのようだ。
    上手奥のコーナーに向かったシホが、声を掛けてくる。

シホ  カオル先生。ワイン、この、2本並んでるやつでいいですか?
カオル シホちゃん、有難う。そう、それなの。お願いします。
シホ  はーい。
サトウ じゃあ、俺、グラス持ってきますね。

    ちょこまか動くサトウ。

アキ  先生。この、野菜のマリネと、イワシのエスカベッシュ、すんごく美味しい。こんな短時間で作ったとは思えないで
    す。
カオル マリネって、結構、素早く出来ちゃうのよね。
アキ  しかも、パプリカの色合いが美しいので、目でも楽しめますよね。
ユイ  たまになんですけど、主人が日曜のゴルフの帰りとかに、会社の方をうちにお誘いすることがあるんですよ。前もっ
    て言ってくれないと、そういう時、本当に困っちゃうんですけど、肉と野菜だけあれば、とりあえず何とか、こんな
    豪華な料理が手早く出来るんだなって。とっても参考になりました。
シホ  はーい。では、皆さん、ワインお注ぎしていきますね。
サトウ あっ、俺が。
カオル 私がホストなので、私がお注ぎするわ。

カオル、ワインを手に取り、コルクを抜き始める。

シホ  カオル先生、すいません。
カオル 全然、すいませんじゃないのよ。日本だから、お酌の要領で、お酒を注ぎ合うのも、いいと思うのよ。その方が、馴
    染みやすいわよね。でも、ヨーロッパ何かだと、お酒は家主が振舞うという習慣もあるようなのよ。
アキ  全然知らなかった。というか、海外旅行すらしたことないし。
カオル 笑い話があってね、フランスの取引先のお屋敷でごく内輪のホームパーティーがあったらしいのね。そのパーティー
    で、商社の新人社員が、良かれと思って、ワインを皆に注いで回ったらしいの。そしたら翌日、取引先のオーナー
    が、あいつは物事を分かっとらんということで、取引がなくなったらしいわ。
シホ  知らなかった、そういう習慣があるだなんて…。
サトウ 怖ぇー。
ユイ  主人の会社にヨーロッパの海外支店があって、その現地の方から聞いたんですけど、公園で子どもたち遊ばせている
    と、うさぎが飛び出してきたらしいんですね。そうすると、自分の子は可愛いという反応なんだけど、海外の子ども
    は美味しそうって、言ったらしいんです。
シホ  あら、いやだ(笑)。
カオル その国ごとで、価値観って、全く違うのよね。

皆、この話に、それぞれ反応している。

アキ  私、先生のところに来てから、何だか世界が広がったような気がするんです。
カオル 世界が?
アキ  そうなんです。私、アフェリエイトでちょこちょこ稼ぎながら、たまにプログラマーのバイトをやっているんですけ
    ど、終始、バーチャルなんですよ。ふと気が付くと、1週間、誰とも話をしていないなんてことも、良くあるような
    生活をしていたんです。でも、昔から食べることには興味があって、で、色々検索していたら、先生が出された本を
    見つけて、それで実際、近所で教室を開いていることが分かって…。
カオル 息子の友達に、とりあえずは、ホームページは作ってもらったんだけど。
アキ  料理を作るのって、物凄くリアルじゃないですか。食材を買って、持って帰ってきて。そして、焼いたり、蒸した
    り、似たり、漬けたりする。時間もかかる。今だと、コンビニとかで、何でも手に入るし、不自由は全く感じなくて
    過ごすことも出来るんだけど、自分だけで完結しているような気がして。それが、寂しいというか、怖くなってき
    た。で、先生と、皆んなと料理を作ることで、色んなことが共有できることの楽しさを味わえたというか。
カオル 嬉しいわ、アキさんに、そんなこと言ってもらえると。でも、私の情報が、インターネットでそんなに簡単に検索で
    きるだなんて…。
サトウ 地域、料理、教室、評判、とかのワードで検索すると、簡単に色々と出てきますよ。
カオル 評判だなんて。何だか…。
アキ  そうなんですよ。皆、目に見えない者同士が書き込みをしているので、怖いといえば、怖いと思いますよ。何を言わ
    れてしまうのかが分からない。やっぱ、こうして目の前に人がいて、話しながら一緒に食事が出来るのって、安心す
    る。
シホ  私は3年前まで学生だったんですけど、今の学食とかって、大テーブルとかじゃなくて、一人で食べる用のスペース
    とかあるんですよ。
ユイ  あら、そうなの。
サトウ 一人で食べているところを見られるのが、友達いない宣言しているみたいで、それが恥ずかしいっていうんで、トイ
    レの個室で昼飯喰ってるヤツとかいましたよ。
シホ  あるある。
サトウ そういうんじゃないけど、俺も一時、誰とも接触したくない状態になっちゃって。…プチ鬱だったことがあるんです 
    よ。
アキ  全然、そんな風に見えないけど…。
サトウ きっかけは些細なことだったんです。新入社員で入社した会社の上司と折り合いが悪くて。兎に角、言うこと成すこ
    と、全部否定されるんで、クサってきましてね。そしたら、だんだん、そのことを考えると眠れなくなってきて。眠
    れないと翌日の仕事にも響きますし、悪循環に陥っちゃったんです。で、朝、起きても、どうしても、会社に行くこ
    とが出来なくなってしまって…。
ユイ  それでどうしてたの?
サトウ 会社辞めて、貯金切り崩して、なくなるまで、家でぼうっとしてました。で、3ヵ月前から配達の仕事で何とか復帰
    して。兎に角、金を貯めて、今では、自分の店を持ちたいなという夢を持って頑張ってます。
カオル お店って、飲食店?
サトウ そうなんです。まずは、ここ、がスタート地点なんです…。ああ、すいません、変な話をしちゃって。
カオル 全然、変じゃない。少しでもお役に立てるのであれば嬉しいわ。

    と、突然、電話が鳴り響く。
カオル、電話口に向かい、受話器を取る。
小声で、深刻な雰囲気で、対応をしている。

カオル で、いつだったんですか? はい、はい。あっ、はい。…ごめんくださいませ。 

カオルの様子を見守る皆。
席に戻る、カオル。

ユイ  カオル先生、大丈夫ですか?
カオル うん、大丈夫よ。
アキ  (スマホを見ながら)あっ、早速、いいねが、45も!
サトウ すごい!
アキ  いや、私自身に興味があるとかじゃないんですよ、皆んな、きっと…。
シホ  私、フェイスブックとかツイッターとか、全くやってなくて。時代に取り残されている感があるんですよ。
ユイ  でも、シホちゃん、ネットを使った婚活は、頑張ってやってるのよね。
シホ  やだ、ユイさん。
ユイ  色んなサイトで情報を集めているんでしょ。
シホ  …はい、…そうですね。マッチングみたいなものとか、婚活パーティーとか、調べたりはしていますけど。
アキ  パーティーとかも行ったりするんだ。
シホ  そんな沢山じゃないですけど、月に2、3回とか。
アキ  それ、多いと思いますよ。
ユイ  でも、ネットとかで予約したパーティーって、どうなの、安全なの?
シホ  ポータルサイトが後援しているものとかは、参加費だけでOKなものもあるし、カップルになったからといって、お
    金が掛かるわけではないので…。来ている人も、結構、お付き合いしたいと真剣に思っている人、多いし。
アキ  それで、お付き合いするようになった人っているの?
シホ  何回かお茶をしたり、お食事をしたりしたことはあるんですけど、そこから本格的にお付き合いをすることになった
    人は、まだ…。
サトウ こんなに綺麗でおしとやかなのに、何で、なんでしょうね。
ユイ  あら、サトウクン。
アキ  (ちょっと気になる)立候補ですか、それって?
サトウ いえいえ、そんなんじゃ…。
アキ  そんなんじゃないっていうのも、失礼な感じですよ(笑)。
サトウ あっ、いやあ、もう、アキさんったら…。
カオル 皆んな、茶化さないの。ねえ(と、シホとサトウに目配せする)。さあ、食べましょう!

    それぞれ美味しいなどと語り合いながら、食事を進めていく。
    
サトウ このミネストローネ、隠し味にソース入れると思わなかったです。何ていうか、コクが増しますよね。

唐突にシホが口火を切る。

シホ  私、ユイさんのような生活が憧れなんですよ。
ユイ  えーっ、どうして私なんかが?
シホ  大手メーカーに勤める優しい旦那さんがいて、可愛いお嬢ちゃんがいる。ユイさんは、旦那さんが頑張って働けるよ
    うに、しっかりとおうちを守っていらっしゃる。素敵だと思います。
ユイ  シホちゃん、それはきっと表面的なことしか見ていないから言えるんだと思うわ。実際は、これでもなかなか苦労し
    ているかも、しれないんだから(笑)。
シホ  すいません、分かったようなこと、言ってしまって。
ユイ  いいのよ。でも、このメンバー、大好きだわ、カオル先生。悪い意味じゃなくてね、利害関係が全くないじゃないで
    すか。私、そこが心地良いんで、通っちゃっているんだと思うんです。美味しい食事をしながら、何でも話し合え
    る。意外かもしれないけど、夫婦とかって、言わないようにしておこうとか、見なかったことにしようなんてこと
    が、毎日イッパイあるのよ。何かしら我慢して生活しているところが正直ある。だから、どこかで息抜きしないと、
    爆発しちゃうかもしれない。あっ、この話、ネットにアップしないでよ(笑)。
アキ  匿名ってことで(笑)
ユイ  アキちゃん!
サトウ …俺でよければ、いつでもサンドバックになりますよ。
ユイ  あら、頼もしい。じゃあ、今から、溜まったうっぷんを晴らすために、ガンガン
殴らせて貰おうかしら!
サトウ ええっ!
ユイ  冗談に決まっているでしょ(笑)。真面目なんだから、サトウクンは。
シホ  カオル先生は、どういうきっかけで料理を教えるようになったんですか?
カオル えっ、私?
ユイ  お聞きしたいわ。

遠くの方で、ドアの開け閉めをする音が聞こえてくる。
一瞬後に、下手から、サトシが部屋の中に入ってくる。

サトシ あっ、いらっしゃい。

    皆、口々に、お邪魔してます、こんにちは、などと返答していく。
    カオル、スクっと立ち上がる。

カオル 今日、遅くなるんじゃなかったの?
サトシ 予定が狂っちゃってさ。
カオル …サトシ。
サトシ 何?
カオル おじいさんが死んだ。
サトシ おじいさん?
カオル そう、おじいさん。
サトシ 誰、おじいさんって?
カオル 海の向こうの、おじいさん。
サトシ 海の向こうの? …ああ、ああ、話に、たまに出てきてた…。
カオル そうなの、その、話にたまに出てきていた、おじいさん。
サトシ じいさん、生きてたんだ。
カオル だから、死んだの!
サトシ 何で急に。
カオル 死ぬのは急でしょうが。
サトシ まあ、そうかもしれないけど。
カオル 外務省から連絡があった。
サトシ 外務省?
カオル 向こうに遺体を引き取りに行かなきゃならないみたい。
サトシ 向こうって…。
カオル バヌアツだって。
サトシ それ、どこ?
カオル 私だって知らないわよ。
サトシ そんなとこで何してたの?
カオル 分からない。バヌアツに居たことすら知らなかったんだから。
サトシ で、何十年も音沙汰がなかったのに、何でうちに連絡が来るわけ?
カオル …35年。私が小学校5年生の頃だったから。そう、もう、35年。
サトシ もう、うちとは関係ないんじゃないの?
カオル 母さんと、籍、入ったままなのよ。
サトシ えーっ、そうなの? 知らないよ、俺、そんなこと。
カオル そんなこと、わざわざあんたに知らせるタイミングも理由もなかったし…。
サトシ で、どうするの?
カオル いつ行くとか、何しなきゃならないみたいな連絡は、また、来るみたい。
サトシ …何だよ、それ…。何がなんだか…。

カオル、ふと気付き…。

カオル 皆さん、ごめんなさいね。

一同、いえいえ大丈夫ですよ、といった対応。

カオル サトシ、あんた、何持ってるのよ。
サトシ 豆乳キムチ鍋…。
カオル えっ?
サトシ 豆乳キムチ鍋の材料。
カオル はっ?

会話に割って入る、サトウ。

サトウ いいっすね、豆乳キムチ鍋。

その場に会する者が、一瞬、ポカーンとなる。
スコンと暗転。
静寂の中、遠くの方から、火の用心の拍子木を打つ音が微かに聞こえてくる。

○第3幕
手にバッグや荷物を持った、ユイ、シホ、アキ、サトウが、お疲れ様でした、有難うございましたなどと挨拶をしながら、下手側より去っていく。
テーブルは綺麗に片付けられている。
残された、カオルとサトシ。
その場は静寂に包まれる。
2人共、てんでに席に着く。

サトシ 話を聞かせてもらおうじゃないの。
カオル 話すほどのことも、実際は、あんまりないのよね、私も小さかったし。
サトシ 日本に居る時は、何してる人だったの?
カオル ものを書いていた人らしい。
サトシ …らしいって。
カオル どこかに勤めていたとか、店をやっていたとか、そういうんじゃなくて、フリーで、取材をして、記事を書いたり
    ていたんだと思う。海外に行くことも多かったみたいなので、家にもあまり居なかったという思い出しかないのよ
    ね。
サトシ どんな人だったの?
カオル んー、優しい人だったかなぁ。たまに家にいる時とかは、近所に散歩に連れてってくれたりしたなぁ。そして、帰り
    に、近所の喫茶店で、クリームソーダを飲むっていうのが、散歩の時の流れだったなぁ、というのを、今、思い出し
    た。
サトシ 普通じゃん。ごく普通の休みの日の出来事じゃん。あれ、今、いくつなんだっけ?
カオル 多分、35年前に40ぐらいだったから、75ぐらいってこと?
サトシ んー、少し早い? それとも、天寿をまっとうって感じなのかな。…ばあちゃんはいくつだっけ。
カオル 来月で、73よ。
サトシ あれ、今、どこ行ってるの?
カオル フラダンス。
サトシ あっ、そうか。

スコンと明かりが落ちる。

○第4幕
    スッと明かりが入ると、カオルとサトシのほかに、フラの格好をしたままのタエが一緒にテーブルに着いている。
    ばあちゃんとは言うが、どう見ても、20歳の童顔な童女の様でもある。しかし、振る舞いは老女のそれだ。
    せんべいを黙々とかじっているタエ。それを見つめる、カオルとサトシ。

サトシ ばあちゃん、こぼすなよ。
タエ  後で、掃除すればいいんだよ。
カオル ねえ、母さん…。
タエ  だって、もう死んじまったんだろ。今さら、どうにもできないし、引き取らなきゃならないなら、引き取るしかない
    だろ。
カオル そりゃそうだけど…。
タエ  ベトナムじゃなかったんだ。
カオル えっ?
タエ  ベトナム戦争が終わった後、週刊誌か何かの取材でベトナムに行ったんだな。向こうは、まだ、戦後の混乱状態で、
    親を失くした孤児がイッパイいたとかで、それで、その子どもたちを助けたいとか言って、自分の子ども放っぽり出
    して、ベトナムに行って、それっきりだったんだよ。
サトシ 急に行っちゃったの?
タエ  あの人は、いつだって急なんだよ。相談もへったくれも、あったもんじゃないよ。
カオル でも、母さんから、お父さんの悪口って聞いたことなかったよね。
タエ  悪口なんか言ってる暇なんてなかったんだよ。お前を育てるのに精一杯で、パート、パートのはしごで、喰いつない
    でいたんだからね。
カオル いや、そうじゃなくて、どっちかって言うと、そういう正義感溢れる夫を自慢にしていたふしがあったというか。
タエ  そんなこと忘れちまったよ…。でも、何で、ボルネオだったんだろ。
サトシ ばあちゃん、バヌアツ。ボルネオじゃなくて。
タエ  うるさいんだよ。そんなの分かってるんだよ。
サトシ (笑)。
タエ  お前が離婚した時…。
カオル あらやだ、何で、今、そんな話になるわけ!?
タエ  あの時は、悪いことしたなって、思ってたんだよ。
カオル 母さんには、全く関係ないじゃない。一緒に住んでいたわけでもないし、姑の意地悪があったわけでもないし。む 
    しろ、仲は良かったし…。
タエ  お前にさあ、お父さんというものを体験させてやることが出来なかったってことなんだよ。両親が揃ってこそ、家族
    ってもんだろ。お前には、夫婦ってこういうものなんだっていう姿を、身近にいる私が見せて上げることが出来なか
    った。だから、離婚とかにもつながったのさ。
カオル そんなこと、勝手に思わないでよ。私は夫より仕事を選んでしまったの。ただ、それだけ。現実的には、もう、ホン
    ト色々な行き違いとか、誤解があったんだけど。そんなこんなが積み重なっていっただけなの。母さんと、私の離婚
    とは全く関係ないんだからね。
サトシ 俺は小さかったから、良く覚えてないけど。それ以降、会う機会もなかったし。
カオル 会いたい?
サトシ えっ、何、唐突に。
カオル 本当は、一度でいいから会いたいとか思っていたんじゃないの?
サトシ そんなことないよ。別に、もう、どうでもいいよ、そんなこと。
 
遠くの方から、再び、火の用心の拍子木を打つ音が微かに聞こえてくる。

カオル 母さんは、何で離婚しなかったの。
タエ  離婚しようにも、相手がどこにいるのか分からなければ、判子を押してもらうこともできないだろ。
カオル 全然、帰ってこないんだから、何とでも、方法はあったはずじゃない?
タエ  そんな難しいこと言われても分からないよ、年寄りには。
カオル 都合が悪くなると、すぐ年寄りに逃げ込んじゃうんだから。横断歩道とか、走って渡る元気があるくせに。
タエ  年寄りバカにすると、バチが当たるぞ。
カオル …母さんさぁ、本当はさ、お父さんのこと、大好きだったんでしょ。
サトシ おっ、ばあちゃん、ラブラブ?
タエ  (サトシを叩こうとしながら)そんな、下品な言葉使うんじゃないよ、お前は!
カオル 近所のナカジマさんとかにも、良く言ってたじゃない。主人は、世のため人のためになる仕事をしているので、家を
    空けることが多いんですって。
サトシ 35年は空け過ぎでしょ。
タエ  (サトシを叩こうとしながら)お前に何が分かるっていうんだ。
カオル ほら、怒った。父さんのこと、悪く言うと怒るんだよね、母さん、昔から。思い出してきた、だんだんと。
サトシ 昔の人特有の、照れなんじゃないの。こう、ストレートに愛情表現できないっていうか…。
タエ  (怒って)ふざけるんじゃないよ!
カオル  …何よ…。
タエ  何も言わずに出ていって、仕送りひとつ送ってくるわけじゃなし。どんなに苦しくて、心細かったか、お前たちに
    分かるわけがない。どこにいるのか知れなかったからできなかったけど、もし目の前にいたら、首を絞めて殺して 
    りたいと思ったことだって何度もあったんだ。家賃払ったら、食費なんかほとんどなくなった時なんか、カオルと一
    緒に死のうかと思ったこともある。世の中はバブル景気に沸く中で、何で自分だけこんな惨めな思いをしながら生き
    ていかなければならないんだって、恨み抜いていた。
カオル …母さん。
タエ  でも、これは、人のせいじゃないんだ、自分で自分の人生を切り拓いて生きていかなければならないんだと思うと、
    スッと気持が晴れて、何だか、少しずつ物事が良い方に動いていくようになっていった気がするんだよ。そうい 
    試練を与えてくれたという意味では、今では、感謝しているかもしれない…。
カオル さっきの離婚の原因については全然違う考えなんだけど。…ただ、母さんがいつも一所懸命働いてきた姿を私は見て
    きていたから、もう、ごく自然に自分はずっと働いていくものなんだという意識が、小さい頃からあったと思う。手
    に職を付けなきゃっていう、軽い脅迫観念があったかもしれない。あっ、これ防衛本能って言うのかな?
サトシ ばあちゃんもカオルさんも強いじゃない? だから、それを見て育ってきた俺としては、その女性の強烈なパワーに
    付いていけないというか、引いちゃうというか…。
タエ  自分の性格を、人のせいにするんじゃない。上手くいかないことがあったら、それは全部自分が招いたことなんだ。
    お前の上手くいかないことなんて、どうせ、彼女に振られたとか、そんな、みみっちいことぐらいに決まってるけど
    な。
サトシ (多少、動揺し)な、何だよ。みみっちいって!? チクショウ…。反論できない…(地団太を踏む)。

タエ、イヒヒとほくそ笑んでいる。
と、ピンポーンと呼び鈴の音がする。

サトシ おっ、コウタだ、多分。
カオル えっ、何、コウタクン?

サトシ、下手側に消える。
と、一瞬後に、サトシはコウタと共に部屋に入ってくる。
コウタは、ヘルメットに袈裟という出で立ち。
ヘルメットを取ると、ベリーショートの金髪ヘアー。

カオル あら、コウタクン、お久し振り。
タエ  何だ、その頭は?
コウタ 明日、ライブなんですよ。
タエ  坊さんが金髪だなんて、世も末だ。
コウタ 明日、終わったら、戻しますんで。
サトシ で、何でわざわざ、袈裟着てきてるんだ。
コウタ 僧侶としてお邪魔するんで、一応、礼儀です。
タエ  檀家が逃げるぞ。
カオル あら、僧侶としてって?
サトシ (皆に)いやあ、さあ、さっき、カオルさんからじいちゃんのこと聞いた後、とりあえずコウタに、葬式のことと
    か、聞いておいた方がいいかなぁって思って…。
タエ  そんなことだけは要領いいんだんな、お前は。

サトシ、コソっと。

サトシ (コウタに)おう、悪かったな、今日は…。
コウタ いいって、いいって、まあ、色々あるよな(ニヤっ)。いやあ、こいつ、今日、大変だったんですよ…。

サトシ、コウタの口を急いで塞ぐ

サトシ でさあ、バヌアツからさあ、じいちゃん、運んで来るわけだろ。その後は、えっ、何、うちに、一旦、戻って来るこ
    とになるのかな。
カオル そうよね…。マンションのエレベーターで、ここまで、運び入れることって出来るのかしら?
サトシ 多分、でっかいよな。…、こう、縦にしないと、入らないよね、きっと。
カオル それって、どうなのかしら、ねえ…。
コウタ エレベーターが難しくても、非常階段を使う場合もありますよ。
サトシ ああ、そうか。
カオル でも、ここ10階よ。
コウタ 自宅にお納めするんじゃなくて、うちの寺に安置することもできますよ。
サトシ なるほど。
カオル そういうことが出来るのね。それ、いいかもしれないわね、母さん。
タエ  …反対だね。
カオル えっ?
タエ  私は、反対だね。
カオル 母さん?
タエ  何で、いきなり寺に運ばなきゃならないんだ。久々の日本だろ。少しぐらい、うちでゆっくりさせてやっても、バチ
    は当たらないだろ。
サトシ …ばあちゃん…。
タエ  (コウタを見て)こんな坊主、信用出来るか!

一同、クスリと微笑む。

コウタ お通夜、お葬式の後は、焼骨(しょうこつ)することに。
サトシ しょうこつ?
タエ  焼き場に行くんだろ。
コウタ その通りです。そこで、お骨にすることになります。。
カオル こういうの初めてだから、何からやっていったらいいのか、何にも分からないわ。
コウタ 日程とか決まったら、寺に出入りしている葬儀屋さんと、全て手配しますんで、大丈夫です。何のご心配もなさらな
    いでください。
タエ  ぼったくるんじゃないだろうね。
カオル お母さん!
タエ  墓はお前んとこにあるだろ。
コウタ タエさんの家系のお墓があります。
カオル 父さんの家の墓は?
タエ  兄弟もいなかったし、もう、両親も他界してるだろうから、辿りようがないよ。
サトシ (コウタに)その、こういうケースって、ありなの?
タエ  私がいいといえば、もうそれでおしまいだよ。
コウタ その通りです。
カオル でも、ゆくゆく縁のある方が、墓を移したいとか言ってくることも考えられるわよね。
コウタ その場合は、お骨を骨壷ごと全部移すことも出来ますし、分骨(ぶんこつ)することも可能です。
サトシ ぶんこつ?って。
コウタ 遺骨を、分けて納めるってことだよ。
サトシ ああ、分ける、のね。…そういえばさあ、宗派みたいのって関係ないの?
コウタ 関係あるよ、うちは、曹洞宗ですよ。ということは、こちらも、曹洞宗ということになります。
サトシ お前って、曹洞宗だったんだ。
コウタ お前もだよ。
カオル でも、父さんは?
タエ  そんなこと知らないよ。きちんと埋葬してやるだけで、有り難いと思ってもらわなきゃ、やってられないよ。
サトシ クリスチャンだったりとか。有り得なくない?

と、電話が鳴り響く。
カオル、受話器を取る。
 
カオル …はい、…はい、えっ、あっ、そうなんですね。…はい、はい、分かりました。

電話を切るカオル。

サトシ …何だって?
カオル …来週、バヌアツに行くことになりそうだって…。どうする? (皆を見渡し)行く?

4人の硬直した姿を残したまま、ゆっくりと明かりが薄くなっていく。

○第5幕
    暗闇の中に、静かにさざ波の音が忍び込んでくる。
被さるように、虫や鳥の声が彼方から洩れ聞こえてくる。
ゆっくりと薄明かりが射し込んでくる。
そこに、タイジの姿が現れてくる。
年の頃、40~50歳くらいだと見受けられるが、はっきりとした年齢は不詳だ。
ほの暗い中で、座禅をし、手を組んで、瞑想している風である。
人工物ではない自然だけの音に包まれ、しばし、静寂の中に観客も身を投じることになる。
部屋の中には、何脚かの椅子やテーブルが置かれている。
ゆったりとした時間が流れていく。
しばらくすると、下手よりアヤが現れてくる。日本人に様にも見えるし、南洋の人の様にも感じられる風貌だ。
瞑想しているタイジにゆっくりと近付き、背後から肩に手を廻し、優しくタイジを抱き寄せるアヤ。
気が付いたタイジは、アヤが肩に置いた手に、自らの手をスッと置き、ゆっくりと首を後ろに向け、アヤに優しくキスをす
る。

アヤ  タイジ、お客さまがいらした。

うなずくタイジ。そして、ゆっくりと立ち上がる。
アヤは、下手側に戻っていく。
既に据え置かれている椅子の1つに、タイジは腰掛ける。傍にテーブルがある。
と、下手側より、アヤが、シマダを部屋に案内して入ってくる。
シマダ、名刺を手に出し…。

シマダ 始めまして。「ナイト・サイエンス」の、シマダと申します。

立ち上がり、名刺を受け取るタイジ。
手を差し出し、どうぞお座りくださいと、手招きする。
アヤ、下手側に消える。
対峙する、タイジとシマダ。

タイジ (名刺を見て)シマダカナコさん。
シマダ はい。…素敵なお住まいですね。
タイジ しばしの仮住まいです。
シマダ 私、てっきり、サイパンにいらっしゃるのかと思っていました。
タイジ ボルネオくんだりにまで、ようこそ(笑)。
シマダ しつこくご連絡させていただいてすいません。

首を振るタイジ。

タイジ このことだけに、こちらへ?
シマダ そうではないんですが。今、うちの雑誌で、歴史から零れてしまった戦渦の後を追う企画を進めていまして。その一
    環で、南太平洋の地域を何か所か回っているんです。
タイジ それは奇特な。今の日本で、過去を振り返ることに興味がおありな方がいるとは…。
シマダ 確かに、今、日本は、未来に向けての発展に一丸となって向かっている、そんな気運で盛り上がっているとは思いま
    すが。
タイジ …未来に向けての発展、ですか…。
シマダ 恐縮ですが、お話をテープに録らさせて頂いてよろしいでしょうか。
タイジ どうぞ。

持参していた鞄から、カセットテープ録音機を取り出し、テーブルの上に置くシマダ。

タイジ 今年の始めに、中曽根がレーガンと会談をしましたよね。
シマダ はい。
タイジ 今後、防衛費の枠も、きっと拡大されていくことでしょうし、取材をするのでしたら、今、ジャーナリストが追うべ
    きは、そういう問題なのではないですか?
シマダ 私は、政治や経済の流れとは違う視点で、社会を考察することも必要だと考えています。
タイジ でも、こういう活動に資金を提供してくれるところは、なかなかないんじゃないですか?
シマダ 正直、大変です。好景気の中から、おこぼれをかき集めている感じです。…何だか、私がインタビューされてしまっ
        ていますね。
タイジ …そうですね。これは失礼(笑)。

アヤが下手より、お茶を運んでくる。

アヤ  (シマダとタイジに)どうぞ。
タイジ アヤといいます。
シマダ お世話になります。
    
アヤ、ニコッと微笑み、下手側に去っていく。

シマダ 奥様ですか?
タイジ いえ、妻と子どもは日本にいます。何もしてやっていない、ダメな父親です。
シマダ …あっ、失礼しました。
タイジ シマダさんは、私がサイパンの日本兵の遺骨をきちんと埋葬しようとしている活動についての新聞記事を、確か、ご
    覧になったということでしたよね。
シマダ はい。そういう活動をしようとお考えになったきっかけからお聞き出来ればと思うのですが…。
タイジ 最初はベトナムだったんです。私もジャーナリストの端くれでしてね。ベトナム戦争後の混乱の時期に取材に向かい
    まして、そこで、戦災孤児のあまりにも多さに愕然として、何とかできないかと思い、しばらくベトナムで、救援活
    動をしていたんです。
シマダ そうだったんですね。
タイジ 外国人が変な活動をしているということで、当局から目をつけられ、大変厳しい状況に置かれたこともありました。
シマダ そこから、どのようにして…。
タイジ 活動が何とか回り始め出したもので、後は、現地の方に任せて一旦帰国しようとしていた時なんですが、やはり、ボ
    ランティアで来られていた日本の住職から、その、サイパンのことをお聞きしたんです。
シマダ なるほど。
タイジ そこで、サイパンに飛んで、現状を視察しました。そして、これは、日本人として、何とかしなければならないので
    はないかと思ったのです。
シマダ とは言え、お一人の力で何とか出来るものでもないですよね。資金も集めなくてはならないでしょうし。
タイジ そこで、仲間のつてを辿り、この現状を日本に伝える方法を考えました。
シマダ それが、あの新聞記事…?
タイジ 結果として、記事にはなったんですが、そこに辿り着くまでも、結構大変でした。
シマダ どのような…。
タイジ 世の中には、こういうことを、一般の人に、知らしめたくないと思っている人もいるのですよ。
シマダ なぜなんでしょう?
タイジ 開けなくてもいい箱は、わざわざ開けない方がいいという考えなのでしょう。
シマダ では、私が拝見したのは、様々な紆余曲折を経て掲載された記事だったということなんですね。
タイジ そういうことです。
シマダ 記事の反響はいかがでした?
タイジ いくつかの団体から援助の要請がありました。中には、日本以外の国からのコンタクトもありました。
シマダ それは、どこなんですか?
タイジ 詳細に関しては、具体化するまで、お話できないんですよ。…でも、皆で支え合おうという思いが、有り難かった。
    とても嬉しい気持ちになりました。
シマダ (微笑みながら)…では、この活動は、ほかの地域でも、されていこうとお考えですか?
タイジ はい、そうですね。で、私は、今、ボルネオにいる。
シマダ …あの、これは、オフレコでなんですが…。
タイジ 何でしょう?
シマダ 生活資金は、どのように…。
タイジ …記事を書いて、通信社や日本のメディアに配信して、細々と暮らしています。
シマダ そうなんですね。…大変、失礼いたしました。 
タイジ いえいえ(笑)。…あっ、そうそう、そう言えば、私と一緒に活動をしている現地の方のお話なんかも、お聞きになり
    たいですか?
シマダ あっ、それはもちろん。
タイジ …では、ちょっと連絡を取ってみますね。

タイジ、下手の奥に消える。
一人、取り残されたシマダ。
静寂の空間に、さざ波の音が忍び込む。寄せては返す波の音。
シマダ、立ち上がり、その場の空間をグルリと見やる。何かに思いを馳せているようにも見える。
タイジ、下手側から戻ってくる。

タイジ シマダさん。

しばし、自分の世界に閉じ籠もっていたシマダ、ハッとして振り返る。

タイジ 大丈夫です。後で、ここに来ます。…お時間は、大丈夫ですか?
シマダ もちろん大丈夫です。今日、この後の予定はありませんから。

タイジ、ニコリとする。
アヤも一緒に部屋に入ってくる。タイジの傍に寄り沿うアヤ。
3人3様、部屋の中を動き回りながら…。

タイジ シマダさんは、この仕事を始めてどのくらいなんですか?
シマダ …3年ぐらいですね。大学を卒業した後、2年程、金融関係の会社に就職して、転職しました。…何だか、つたなく
    てすいません。
タイジ いえいえ、つたないだなんて。
シマダ 伝える仕事がしたくて、それで、この仕事を選んだんです。
タイジ 大変素晴らしいと思います。未来を背負っていくわけですね。
シマダ そんな大それたことは…。
タイジ …お時間、おありだということなので…。
シマダ …はい?
タイジ 少々、寄り道になってしまうかもしれませんが…。
シマダ どうぞ、どうぞ。…何だか、お聞きしたいわ…。
タイジ 色々な国を、こうして訪ね歩いていますとね…。
シマダ ええ。
タイジ 自分の役割って、一体何なのかなぁ、という思いに、良くぶち当たることがあるんです。
シマダ はい。
タイジ 自分自身のことについてもそうなんですが、異国の地に居ますとね、日本人としてどう生きるべきなのかというアイ
    デンティティを、自らに問うていってしまうことがあるんですよ。
シマダ ささやかながらですが、分かるような気がします。 
タイジ 日本人として、様々な国の、色々な人々に対して、どんな貢献が出来るのかということを、ついつい考えてしまうん
    です。
シマダ はい。
タイジ 太平洋戦争で日本は南洋に進出しました。ここボルネオも、油田があったことから、日本軍の重要な拠点であったよ
    うです。しかし、後に、連合国に奪還されることになる。そんな地だったのです。
シマダ そのようですね。
タイジ 戦局だけを紐解いていくと、そういった記述になるのかもしれません。しかし、この地にも、多くの人々は住んでい
    た。しかし、歴史の中においては、市井の人々のことはなかなか伝承され難いのです。
シマダ はい。
タイジ 一人ひとりが声を上げていかなければならないと私は思うんです。大衆は、個人から成り立っているのですからね。
シマダ その通り、ですね。
タイジ 唯一の被爆国である日本人などは、戦争の責任を問い、争うことの無意味さを、もっと訴えていかなければならない
    のだと思います。原子力などにまい進する昨今の動向などに対しても、声を高くして、意義を唱えていかなければな
    らない。…私は、そう思う様になりました。

寄せるさざ波が、大きな轟音となって、津波の様にその場を覆い尽くす。 
虚空を見つめる、タイジとアヤにシマダ。
タイジとアヤ、そして、シマダは、思い思いに席に着く。

タイジ 私、環太平洋地域を巡っていて、気が付いたことがありましてね。
シマダ …何を、ですか?
タイジ この地域の人々って、皆、自然を崇拝しているんです。言い方を変えると、自然の中に神を見出しているとでも言っ
    たら良いでしょうか。
シマダ 日本で言うところの、八百万(やおおろず)の神でしょうか?
タイジ まさに、そうなんですよ。 
シマダ …、ああ、ああ…、なるほど…、なるほど…。
タイジ 既成の宗教を信仰している人々も多くいます。しかし、それは、後に伝えられてきたことなんです。
シマダ 確かに、そうなのかもしれない…。

アヤが、とつとつと、話し始める。

アヤ  タイジ。テーブルはここにあり、チェアもここにある。太陽や星もここにあり、海や森もここにある。動かしてはい
    けない。

傍にいるアヤを、軽く抱き寄せるタイジ。

タイジ 最近、そういうことに興味が出てきているんです。環太平洋地域に住むネイティブな人々の、信仰や愛や食べ物や音
    楽などについて、もっと、もっと、知りたいと思っているんですよ。
シマダ そうか、音楽や踊りなどにも、何か共通するものがあるのかもしれないですね…。
タイジ 少し視点を広げて見ると、また、面白いんですよ、これが…。オーストラリアのアポリジニ、謎の物体を作ったイー
    スター島などの南米地域の人々、ネイティブ・アメリカン、エスキモー、そして、日本…。どう思います?
シマダ うわぁ…。
タイジ 面白いでしょう? 
シマダ 地球の反対側とは、まるっきり、違いますよね。
タイジ おっしゃる通りなんです。経典などが一切無い世界。私には、どこかで繋がっているとしか思えないんですよ。
シマダ 今、ここにあるもの、その全てを受け入れていくという…。
タイジ そうなんです。ありのままを受け入れていくことが、最も大切なんだと思うんですよ。自然を敬い、相手を尊重し、
    そして、時には助け合う。皆がそういう気持ちでいたら、争いごとなんか、生まれてくるはずはありません。追い付
    き追い越せの今の日本で、こんなことを言っても、誰にも相手にされないでしょうけど。
シマダ いえ、いつか、きっと、皆んなが気付く時が来ると思います。

ドアベルが鳴り響く。
アヤ、下手側に消えてゆく。
彼方から、微かに話し声が聞こえてくる。

タイジ おやじが、何、ロマンチックなこと言ってと、バカにしていただいて結構なんですが(笑)。
シマダ いえいえ…。
タイジ ムー大陸って、ご存知ですか?
シマダ あー…、かつて、太平洋上にあった大きな島で、今はもう、沈んでしてしまったと言われている…。
タイジ そう。その、ムー大陸に、かつて、一緒に住んでいた人々が、沈みゆく大陸から逃げ出して、散り散りバラバラにな
    って、周辺の島に流れ着いたのではないのかって考えてみると、楽しくありません?
シマダ とっても、楽しいです。
タイジ 私はね、既成の宗教という枠を超えて、世界は自然と共にあるということを伝えていくことが、日本人の責任ではな
    いかと思い始めているのです。いや、日本人だからこそ、これは実現可能なことなのではないのかと確信しているの
    です。日本人は、受け入ることが出来る国民、だと思うんですよ。
シマダ 素晴らしいと思います。
タイジ いや、私は 片輪なんですけどね。こんな偉そうなこと言っていますけど、家族一つ幸せにしてあげることが出来て
    ないわけですから…。自分勝手に生きているだけなんですよ、私は。
シマダ …。
タイジ しかし、多分、私は、ひとっ所に落ち着くことなく、これからも彷徨っていくことになるのでしょうね。…全てを手
    に入れることが出来るといいんですけどね…。これが、なかなか難しい…。
シマダ 先生?
タイジ ?
シマダ 思えば叶うと思いますよ。きっと…。

下手側から、アヤに誘導されたジェイが現れてくる。現地の人だというが、色黒の日本人のようにも見える。

タイジ ヘイ、ジェイ。

タイジとジェイ、握手を交わし、ハグし合う。

タイジ シマダさん、こちらジェイさん。
シマダ シマダです。宜しくお願いします。
ジェイ ジェイです。ヨロシクお願いします。…私、日系2世なんです。
シマダ あら、そうなんですね!

タイジ、シマダ、アヤ、ジェイが、和やかに話している光景を見せながら、明かりがゆっくりと消えてゆく。

○第6幕
漆黒の闇の中に、旅客機が滑走路に降り立つ音が聞こえる。
次いで、ガヤガヤとした色々な人々の話し声。
そして、静寂に包まれた森の自然な様子の音、葉音、鳥の鳴き声、虫の音、波の音などが、オーバー・ラップしてくる。
ゆっくり明るくなると、カメラを肩に担いだサトシが、上手側に現れてくる。
多分、森林の中に居るのであろう。周囲を見渡しながら、シャッターを何度か切っていく。
と、下手側に、一人の男の者影が現れてくる。どうやら、かつてのタイジの姿の様だ。
あちこちにファインダーを向け、シャッターを切るサトシであるが、タイジが佇む方向にシャッターを切った後、あれ、というような素振りを示す。
観客にタイジは見えてはいるのだが、どうやらサトシには見えてはいないようなのだ。しかし、写真にはしっかりと、タイジの姿が写っているようである。

サトシ 誰だ、このおっさん。何で、何もない空間に、こんなものが写り込んでいるんだ?

タイジ、にやりと微笑む。
上手後方から、カオルが現れてくる。

カオル お母さんに、無事着いたって連絡ついた。あれ、あんた、何やってんの?

先程撮った、デジカメの画像をカオルに見せる、サトシ。
高らかに音楽が流れ出す。
カオル、サトシ、タイジは、すくっと立ち、目の前の彼方にある虚空を見やっている。何かを見ているようでもあり、何かを探している風でもある。しかし、3人は明らかに、シンパシーを感じ、同調し合っているように見える。
スーっと目線が下に下ろされ、3人は笑顔で観客に優しい眼差しを向け始める。しかし、感動的な光景に水を差すかのように、電話の着信音が鳴り響く。
音楽は鳴り止み、サトシが、掛かってきた電話に出る。

サトシ はい、はい、えっ? えっー? ミオー? 何、何? えっ、えっ、俺? 今、バヌアツ。…これには、話せば長い
    事情があってさぁ。ああ、分かった、分かったよ、帰ったら必ず連絡するよ。うん、うん、じゃあね、また…。

    嬉しそうに、電話を切る、サトシ。

サトシ やったー!

思わず、傍に居た、カオルに抱き付くサトシ。

カオル あら、何よー。
サトシ カオルさん?
カオル えっ?
サトシ つながっているんだね。
カオル 何?
サトシ 思いは、つながっていくんだね。

茫洋とした中にも、微かに微笑むサトシ。
3人3様の姿を残したまま、スコンと明かりが落ちる。
再び、人々を祝福するかのように音楽が流れ出す。

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