2004年 2月

一見バラバラの出自の出演者であるが、その持分を活かした個性がそれぞれ際立ち、パワーあるアンサンブルが現出した。出演者それぞれが見せ場を持ち、オンステージを繰り広げる連続。タレントとその技量を堪能出来るハイレベルのステージである。

狂言回し的役割の南原清隆のスタンス軽い存在感が、舞台に大きな広がりを見せる。別所哲也もフットワークの軽さを活かし好演。「空を見ろ」などの熱唱が耳に残る。マルシアの堂々たる威厳が作品をキリリと締める。また、アンサンブルの個性も作品のクォリティに大いに貢献し、入江加奈子、杉崎政宏、高谷あゆみなどエッヂの効いた演技が作品にシャープなアクセントを持たせていた。

宮本亜門演出は日生劇場の機構をダイナミックに駆使し、また、装置の移動に伴う役者の導線などに細かな配慮もあり、且つ、作品のコミカルな要素を役者の資質とをシンクロさせた演出にて、深刻さを突き抜けた明るい世界を創造した。特に役者の個性を引き出し溌剌とした空気を作り上げパワーを発散させることで、テーマの重さを払拭させていた。

そう、テーマが意外に重い。自由に水が使えるようなった弊害の顛末も十分深刻だ。未来に向けての警鐘がキッチリと作品の中に打ち出されている。コマーシャリズムに乗らないその姿勢に非常に好感が持てる。原案者のスピリッツが鳴り響いてくる。

暗い現状を吹き飛ばすような明るさに溢れた演出にて、鋭いテーマをウェットに富んだ上質のエンターテイメントに仕上げた宮本亜門の手腕は、確実にNYへと向かっていくに違いない。

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